頭の中に居つくハエ

頭の中をきれいにしたい。すべてというわけではない。ほんの一部だけが汚れている。というよりはうるさいハエがブンブン飛び回って僕の気を散らす。このハエを追い払いたい。

 

大切なことに集中しようとするとやってきて僕の耳元でブンブンとうなる。いや、正確には僕がそのハエにしゃべらせている。僕の言うことに対して、そのハエが何を言うか僕が考え、勝手に会話している。僕一人で二役を演じているのだ。

 

決して楽しい会話ではない。嫌な気分を思い返すことがほとんどだ。しゃべりたくない、会いたくもない人との会話を思い出し、それを繰り返し頭の中で再生している。またやってしまったと気がつくがすぐに同じ会話を再生してしまう。まるで囚われているようだ。

 

原因はわかっている。勤め先の上司三人だ。同族会社のトップ三人は決して一枚岩ではなく不協和音をまき散らす。それを真正面から受けても自分の仕事をやりぬこうとしていた。渦巻く激流の中を必死に泳いでいた。休職直前は溺れていることにも気がつかず両手両足をバタバタさせ前に進もうとしていた。バカだったと思う。

 

休職・療養して数か月経った。三人と会うことはなくなった。しかしうるさいハエは一日の中で何度もやってくる。出社できなくなった日から比べれば、いくらか耳から遠ざかったようではあるが。

 

メンタルクリニックの先生には、楽しい出来事で古いメモリーを書きかえることが一番と教えられた。そのアドバイスを信じて毎日過ごしている。いつかはハエがいなくなり、僕の頭の中がスッキリきれいになる日がくると信じている。